高齢者の入浴介助①〜簡単・効果的な髪の乾かし方、ドライヤーの使い方、 注意点、新人介護職員経験談
介護施設での入浴後、利用者の髪を乾かすお手伝いをすることも、介護職の仕事の一つです。ドライヤーで乾かすだけなので、ほとんど説明を受けることもありません。移動や移乗などの介助ほど、事故やインシデントにつながる可能性は少ないとはいえ、気をつけなければならないこともあるのでまとめておきます。
無資格や新人介護職の場合、入浴介助までたどり着くには、ある程度の経験/日数が必要になるかと思いますが、ドライヤーで乾かすお手伝いは、入職後早々に回ってくる可能性があります。

私のデビュー戦は、現場で「あとはよろしく」放置状態。
どうすんのコレ?コンセントどこ?くしやブラシは?
など、アワアワ大混乱ですが、「早く乾かして」と先輩職員はお怒り気味。
「普通にやればよい」と思われているのでしょうが、その「普通」がわからないのが新人職員なのです。
ドライヤーで乾かす前に、絶対に押さえておきたい注意点
ドライヤーで乾かす前に、絶対に押さえておきたい注意点があります。



髪を乾かすことだけに気持ちが向いてしまう新人職員だからこそ、大切なポイントはしっかり押さえておきたいものです。
利用者の安全確保
ドライヤーで乾かす際、利用者には椅子にしっかり座ってもらい、安全を確保します。
もちろん、介助する自分の足元にも、モノが落ちていないことを確認し、安全を確保します。



利用者の私物やタオル、スリッパはもちろん、ドライヤーのコードや延長コードなど、床にはモノがあります。踏んづけたり引っかかったりしないよう、自分の足が踏みそうなところは必ず確認が必要です。
着替え・ドライヤーはできるだけ早く
施設では、長湯はしませんし、脱衣所の気温も調整してあるとはいえ、利用者が湯冷めしないよう短時間で着替えやドライヤーを終わらせる必要があります。



利用者に負担をかけないためでもありますが、モタモタしていると先輩職員の冷たい視線や無言の圧を感じることも。
とにかく早く、確実に!
声がけで確認
「ドライヤーで乾かすこと」「風があたること」を説明し、利用者の同意を得ます。



慣れないうちは、利用者のこともよく知りません。
声がけで確認することも大切です。
自分でできることは利用者ご自身にやってもらう
利用者ご自身でできることは、自分でやってもらいます。



全ての利用者の髪を乾かさなければならないわけではありません。自分でできる方は自分でやっています。
慣れたらわかるのでしょうが、慣れるまでは、どの方がどこまでのお手伝いが必要かわからないもの。
先輩の指示に従いつつ、声がけで確認するようにします。
ドライヤーがぶつからないように細心の注意
乾かしているご本人はもちろん、周囲の利用者にも、ドライヤーやコードがぶつからないよう細心の注意を払います。



乾かしている時に、利用者が動いたり、他の利用者やスタッフが近くを移動していることもあります。
不慣れなうちは、早く乾かすことに気を取られがちなので、周りをよく見ながら慎重に進めるよう意識する必要があります。
ドライヤー中にも声がけで確認
ドライヤーの風の温度や強弱、体調の変化、不快なことはないか、、など、利用者の表情や声がけでこまめに確認しながら進めます。



高齢者の入浴は、体力を消耗しやすく、疲労を感じやすい場合があります。そこに、ドライヤーで風を当てられているわけですから、より疲労感も増します。声がけへの反応は、体調変化の確認にも役立ちます。
高齢者の髪を早く優しく乾かす基本の方法と注意点
いわゆる「普通」の方法で、早く優しく乾かすための基本のやり方と注意点です。


❶ まずはタオルドライ
洗髪後は、まず髪の毛をタオルドライし、表面の水分をしっかり拭き取ります。
髪の根本には、水分が溜まりやすいです。頭皮をマッサージするように、押さえるようにしながら拭き取ります。タオルドライを丁寧にすることで、ドライヤーでの乾燥時間も早まります。
- 利用者の頭を片手で支えながら、もう片方の手で拭き取る
→ 利用者の頭が安定するので安全、かつ拭き取りしやすくなります - 髪の毛は、タオルで挟むようにし、優しくポンポンと叩くようなイメージで
- 髪の毛の短い方は、頭皮部分の拭き取りのみでも十分です
- ゴシゴシ力を入れることは避ける



利用者の頭部をタオルドライする時には、力加減やスピードがわからずドキドキします。片手で頭部を支えておくことで、安定感が増し、介助側も不要な力が入らなくなるので安全・安心です。
❷ 温風で根元から乾かす
まずは、髪の根本を温風でしっかり乾かします。
- ドライヤーは頭から15cm程度離す
- 温度確認のため、自分の手にも風があたるようにする
- 基本的に、ドライヤーの風は上・横・後ろから当てる
- ドライヤーを小刻みに上下左右に動かす
→ 同じ箇所に風が当たり続けるのを避けられます - 自分の指の腹で、利用者の髪の毛をサラサラと左右に動かす
- 髪に手指を通し持ち上げるようにし、風の通り道を作りながら乾かす
→ 乾きも早くなり、熱を逃がしやすくなります - 根本をしっかり乾かす
- 頭皮の火傷や乾燥に注意
→ 高齢の方は、髪が細く薄くなっているので、頭皮に直接風が当たりやすいです - 利用者の顔に風が当たらないよう配慮
→ 前髪を乾かす時には、顔に風が当たらないよう自分の手をかざしたり、髪を持ち上げたりします - 耳介は風が当たりやすいので注意
- 頭皮に発赤や発疹がでていないか確認
→ お風呂の熱やドライヤーの熱で、温熱蕁麻疹が出現することもあります。数分〜数時間で消失しますが、皮膚の様子をよく観察しながら進めることが大切です



頭皮がよく見えるほど髪が細く薄くなっている場合、ドライヤーの温風は少し熱いかもしれません。適度な距離を保ち、1箇所にあたり続けないよう気をつけています。
髪が薄い方ほど乾くのは早いのですが、乾かす時に緊張します…
❸ 温風や冷風で髪の毛を乾かす
8割方乾いたら、温風と冷風を利用して、髪全体を乾かします。強弱を調整できるドライヤーであれば、ある程度乾いてきたら、弱風にすると利用者の負担が軽減されます。
- 髪に手指を通し、風の通り道を作りながら乾かす
- クセを伸ばすように、軽く引っ張りながら根本から毛先に向かって風を当てる
- 分け目がある方は、分け目と反対から風を当てると、根本が立ち上がりふんわり仕上がり、地肌が目立ちにくくなる
・右に分け目のある方は、左から右に
・左に分け目のある方は、右から左に
- パサつきの原因にもなるので、毛先にはあまり温風をあてない
→ 高齢になると、髪が細く痛みやすいので配慮が必要です



ドライヤーの冷風を嫌がる方もいらっしゃいます。
声がけをしながら、温風冷風を使い分けています。
❹ 仕上げ
くしやブラシで髪の流れを整え、最後に冷風で仕上げて終わります。
- くしやブラシで整えながら乾いていない箇所を確認
- 利用者に声がけをし、乾いてないところや不快な箇所がないか確認
- 終了したことを伝え、体調を確認
- 利用者の足元を確認し、安全を確保
・タオルやドライヤー本体、延長コード、くし、ブラシなど
浴室や脱衣所、ドライヤーをかける部屋が暑いと、脱水症状を起こす可能性もあります。休憩や水分補給が必要です。



ドライヤーで乾燥後、自分の席へ移動する場合には、動線上に障害物がないかよく確認。
延長コードが床にある場合には、引っかかる原因になるので、移動させることも必要です。
私の職場は、脱衣所床の真ん中に延長コードがあり、そこからドライヤーの電源をとっているので、本当に気をつけています。
最初の時は、ショートなどの事故のつながるのでないかと、相当驚きましたが、「早く乾かして」圧が強く、それどころではありませんでした。
それなりの量の水がかかることはないとはいえ、脱衣所床だと、お風呂上がりやタオルドライなどで水が落ちたり弾く可能性があるので、今でも心配しています。が、、、先輩職員は気にもしていないので、そういうものかもしれません。
入浴介助で髪のセットはどこまでするものか
入浴後、ドライヤーで髪を乾かすのは、あくまで「介助」です。
あまりにボサボサの仕上げでは利用者に対して失礼ですが、美容室ではないのでブラシやくるくるドライヤーなどを用いて、きれいにセットするところまでは要求されません。



こんな感じでいいかな、、と不安になりますが、大丈夫。
最後に利用者に声がけ・確認して終了。
逆に、一人の利用者に時間がかかってしまうと、ドライヤー待ちの利用者が増えてきます。利用者にも負担がかかりますし、なにより先輩職員の厳しい視線を感じるようになります…
入浴介助は時間との勝負
入浴介助は時間との勝負です。
着替え、入浴、洗髪はもちろん、髪を乾かすのも時間との戦いです。時間がかかるほど、利用者に負担もかかります。
限られた時間の中で、希望者全員の入浴を終わらせる必要があるので、介助側にもスピードが要求されます。
そのためモタモタしていると、入浴介助の他のスタッフ、先輩職員からの圧もあります。
不慣れてアタフタしがちですが、ポイントを押さえて、事故やインシデントがないよう、かつ利用者が不満に思うことのないよう、こなし続けるしかありません。



私は週2回勤務ですし、毎回ドライヤーのお手伝いをするわけではないので、まだまだ慣れません。
念の為、注意事項やコツをまとめたメモを勤務日の朝に見返しています。











