平均寿命・健康寿命には意味がない?〜不安を煽る無意味な数字と、本当は大切な健康の指標
2023年の日本人の平均寿命は、女性が87.14歳、男性が81.09歳で、いずれも3年ぶりに前の年を上回ったことが厚生労働省のまとめでわかりました
NHK NEWSWEB
「新型コロナウイルス感染症や、がんなどにより亡くなった人の割合は減少した一方、老衰で亡くなった人の割合は増加した」との厚労省の分析もあるので、勘違いされやすいのか、SNSなどではシニア族を邪険に扱う荒れたコメントなども見受けられました。
おそらく、「平均寿命」や「健康寿命」の定義を知らずに、文字通りに受けとめているからだと思われます。こんな感じ↓
平均寿命:今生きている日本人の平均寿命 or 前年に亡くなった方の平均年齢
健康寿命:今生きている日本人が介護や支援なしで健康に過ごせる期間
間違ってます、ソレ。
健康寿命を迎えたシニア世代が、税金使いまくって、延命措置してもらって、叩き出した世界一の「平均寿命」なわけではありませんよ。。と、毎年思うのですが、自分でも正しく理解するために再度調べてまとめておきます。
先に言うのも何ですが、そのあたりの言葉の意味を理解すると、どうでもいい指標や数字にいかに振り回されているか、思い知らされます。
平均寿命も健康寿命も無意味な数字でしかない
「平均寿命」や「健康寿命」はキャッチーで直感的にわかりやすい言葉であるため、頻繁に使われていますが、定義を理解すれば、シニア世代にとっては何の意味もない言葉であることがわかります。
さらに、害悪なのが、平均寿命から健康寿命を引いた期間(不健康期間)が、男性で約9年、女性約12年があることを、なにかにつけて持ち出し、いかに老後の生活に不安があるかを、「専門家」やメディアが煽ることです。
見るべき数字は、平均寿命でも健康寿命でもありません。
「健康寿命」に振り回されていたら、人生の終盤は損します。
【言葉の整理】平均寿命・平均余命・健康寿命・不健康期間???
平均寿命とは?
平均寿命とは、その年に生まれた0歳児が平均して何歳まで生きるかを示す指標、寿命の予測値
言い換えれば、出生時の平均余命のことです。
そろそろ65歳になる1960年(昭和35年)生まれの人の平均寿命は、男性65.32歳、女性70.19歳。
2023年生まれの日本人の平均寿命(出生児平均余命)は、男性が81.09歳、女性が87.14歳。
この65年の間に、男女ともに16〜17年ほど、平均寿命が伸びています。
公衆衛生の改善、医療技術の進歩、生活環境の改善、乳幼児死亡率の低下、健康意識の向上、教育水準の向上など、様々な要因によります。
1年以上前に生まれた人の人生には、最新の平均寿命は基本的になんの関係もありません。
寿命中位数とは?
寿命中位数とは、生命表上で、出生者のうちちょうど半数が生存すると期待される年数
言い換えれば、同年に生まれた人の数が半分になると思われる年数のことです。
1960年生まれであれば、2人に1人の男性が70歳を迎え、2人に1人の女性が75歳を迎えると考えられています。
同じ年に生まれた人の数が半分(要は半分亡くなられる)と思われる時期は、平均寿命よりも後なのです。若くして亡くなる人がまだ多かった時代ですから、平均寿命(出生時平均余命)にも影響していました。
近年は、平均寿命と寿命中位数の差は3年程度。若いうちに亡くなる割合が激減しているためです。
平均寿命(出生時平均余命)よりも、ずっと長生きする人の方がずっと多いのです。
だから、今のシニア世代にとって、自分たちの平均寿命も、今の新生児の平均寿命も、意味のない数字なのです。
平均余命とは?
平均余命(へいきんよめい)とは、ある年齢の人が平均してあと何年生きられるかを示す指標、期待値
気にするならコレ
今の自分の年齢なら、平均どのくらい生きるのか参考になります
65歳平均余命とは?
65歳平均余命とは、65歳の人が平均してあと何年生きられるかを示す指標、期待値
高齢者の寿命を考える際によく使用されています。
健康寿命とは?
健康寿命とは、0歳から数えて、健康上の問題で日常生活が制限されることなく過ごせる期間の平均
2022年発表のデータでは、男性72.7歳、女性75.4歳。
【健康寿命の3つの指標】
- 「日常生活に制限のない期間の平均」 (客観的だが自己申告)
- 「自分が健康であると自覚している期間の平均」 (主観的で自己申告)
- 「日常生活動作が自立している期間の平均」 (客観的で介護保険利用)
出典:健康寿命の算定方法の指針
自己申告の基準が驚くほどに曖昧なのです。例えばこんな感じ↓で「健康」か「不健康」かを分け、「健康寿命」を算出するのです。
冗談みたいですが、本当です。
健康寿命とは、健康上の問題で日常生活に制限のない期間の平均であり、国民生活基礎調査(大規模調査)の健康票における「あなたは現在、健康上の問題で日常生活に何か影響がありますか」という質問に「ない」という回答であれば「健康」とし、「ある」という回答を「不健康」として、サリバン法(※)により算出している。
内閣府 令和5年版高齢社会白書
言い方は悪いのですが、介護や支援は受けるほどではなく、慢性的な腰痛や関節痛、加齢に伴う軽度の視力低下で若干生活に不便を感じている人でも、自己申告すれば「不健康」、自己申告しなければ「健康」。そのデータから算出されたのが「健康寿命」です。
日本では、無障害平均余命(DFLE: Disability-Free Life Expectancy)で算出するので、重症度は関係ありません。日常生活への影響が「ある」「なし」の二分法です。
不健康期間とは?
不健康期間=平均寿命ー健康寿命
「不健康期間」と言う言葉自体は使わないこともありますが、平均寿命と健康寿命の差が男性約9年、女性約12年の数字はよく見かけます。こんな感じ↓
いつまでも「健康」でいられることを目標にはしたいものですが、年を重ねれば体もポンコツになります。
出生時の平均余命である「平均寿命」から、生活に支障を感じない「健康」な期間を差し引いた「不健康期間」を短くするよう言われても、ピントがずれまくっているのです。
多少ポンコツになっても、家族やヘルパーさんの支援やサポートを受けても、自立して生活できる期間を延ばすことを目標にしないと、80〜90代まで生きるのに不安や不満ばかりとなり、人生の終盤戦を楽しめません。
平均自立期間とは?
平均自立期間とは、日常生活に介護を必要とせず、あと何年自立した生活が期待できるかの指標
日本では、介護保険制度のデータを基に、要介護者割合(介護度2〜5)から算出されます。
65歳平均自立期間
65歳平均自立期間とは、65歳の人が平均してあとどのくらい日常生活に介護を必要とせず生活できるかの指標、期待値
要介護2以上になるまでの期間が「自立期間」とみなされます。
知るべき数値はコレ
サポートは受けても自立した生活ができる期間です
【65歳平均自立期間の全国平均】
・男性 18.29 → 83.3歳
・女性 21.45 → 86.5歳
令和3年 都道府県別 健康寿命(65歳平均自立期間)の算出値について
言い換えると、要介護2になる平均年齢は、男性83.3歳、女性86.5歳
もちろん、個人差はあります。でも、これが今の日本の平均値なのです。
家族やヘルパーさんなどのサポートを受けながらでも、自立した生活を送ることができる期間は、平均してもこんなに長いのです。
中には、ケガや病気で要介護期間が長くなる方もいます。
でも、これが平均値です。
老度への備えは大切です。だからといって、無駄に心配したり、やらなくていいことに時間を割いたり、買わなくていいものを買っている場合ではありません。
健やかに、楽しく生きることに、もっと目を向けていいはずなのです。
ほぼ煽り(あおり)記事レベル
指標として様々な数値があることには意味がありますが、一般人にとっては基本的に関係ない、言えば「どうでもいい」レベルはたくさんあります。
「平均寿命」とか「健康寿命」とかは、まさにその代表例です。キャッチーな指標に、国民は不要な不安を煽られているのが現実です。
「平均寿命」は出生時平均余命だし、「健康寿命」は生活に支障を感じる前までだし、「不健康な期間」と言っても必ずしも介護や支援が必要とも限らない。
シニア世代の楽しい老後という視点では、その全ての指標になんの意味もないのに、不安ばかり煽られ続けます。
厚労省もですが、保険会社、製薬会社、サプリ関係、老後資金関係(銀行、証券会社、ファイナンシャルプランナー等)など、この界隈は特に好んでこの数値を使います。
不安を煽れば煽るほど、お金になるのです
そんなわけですから、シニア世代は現役世間から見ればまるで社会の◯◯扱いされたりするのです。
中には、お行儀の悪い高齢者もいることは認めますが、不必要に不安や憎悪を煽られているような気がしてなりません。
指標はただの数値でしかありませんので、あまり気にしないのが一番です。健やかに、楽しく、生きる抜くことだけを考えて過ごしたいものです。