節分豆まき基礎知識〜年男/年女/厄年、豆まきの時間・場所・撒き方・注意点、撒いた豆の食べ方や数、鬼やおかめ、子ども/犬猫ペットの注意点
節分の「豆まき」に関する基礎知識をまとめておきます。
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節分と鬼、おかめの関係
なぜ節分には鬼が来るの?
節分は、本来季節の節目、新しい季節が始まる(立春、立夏、立秋、立冬)の前日のこと。
季節の変わり目に、体調を崩しやすい、災いが起こりやすいのは、見えない悪い力である「邪気」が入り込みやすいためと考えられてきました。
特に、現代の2月の節分は、旧暦の大晦日にあたります。
そのため、目に見えない悪い力である「邪気」を払い、新しい年を迎え、無病息災で過ごせるように祈ってきたのです。
節分だから、鬼がやってくるのではなく、邪気の象徴である「鬼」を払うことで、厄災が降りかからないようにしてきたのが節分の行事なのです。
鬼の色は煩悩の色
節分の鬼といえば、赤鬼、青鬼をよく見かけますが、言い伝えでは5色。それぞれに意味があります。
鬼の色は、仏教の「五蓋(ごがい)」と呼ばれる「5つの煩悩」を表しています。
自分が打ち勝ちたい煩悩の色の鬼を追い払うと良いとのこと。
- 赤鬼:貪欲、欲望、渇望の象徴
- 青鬼:憎悪、悪意、憎しみ、怒りの象徴
- 黄鬼(白鬼):心の浮動、後悔、甘え、我執の象徴
- 緑鬼:倦怠、眠気、不健康の象徴
- 黒鬼:疑、愚痴、疑いの心の象徴
なぜ節分に「おかめ」なの?
「おかめ」は、お亀、阿亀(おかめ)とも書き、お多福、阿多福(おたふく)、文楽人形ではお福(おふく)とも呼ばれ、福が多いという意味を持ち、縁起の良い顔とされています。
おかめは、低い鼻、平らな額と顎、丸く膨らんだ頬など、特徴的な容姿をしています。
そのため、節分において「福」を呼び込む存在として重要な役割を果たしています。
節分の豆まきでは「鬼は外、福は内」と掛け声をかけますが、この「福は内」の「福」を象徴するのが「おかめ」なのです。
おかめの面を飾ったり、おかめの描かれた縁起物を飾ることは、家の中に福を呼び込もうとする意味合いがあるとされています。
古くには、福々しい体躯の女性は災厄の魔よけになると信じられ、ある種の「美人」を意味したともされています。
時代が変わると「美人」の意味するものも大きく変わりますね。
節分とおかめと鬼の関係
京都に、千本釈迦堂 大報恩寺(だいほうおんじ)という古刹があります。
大報恩寺は、鎌倉時代に実在した夫思いの「おかめ」との縁が深く、「おかめ塚」が境内にあります。「節分会(せつぶんえ)」には、『鬼追いの儀』という狂言が奉納されます。
荒くれものである鬼が、その宝物である、振れば何でも思い通りのものが出てくる「打ち出の小槌」を持って暴れまわります。
人々は、豆を撒いて鬼を追い払おうとします。
鬼は退却しますが、豆が底をつくと、今度は鬼が優勢。再び、手に負えなくなります。
そこに、「おかめ」が登場。
おかめは、福々しい笑顔で鬼たちを優しく諭します。
鬼たちは、メロメロになり、自らの行いを悔い改め、宝物である打ち出の小槌をおかめに差し出し、退散。
おかめは、その「打ち出の小槌」を参拝者に振り下ろし、人々に福を分け与えます。
節分の話ではありませんが、「鬼」「おかめ」「豆まき」の関係がある演目です。
節分と豆の関係〜炒り大豆の謎、豆の種類
豆まきの理由
日本では、5種の主要な穀物である「米・麦・ひえ・あわ・豆」を五穀と呼びます。
五穀には、「穀霊(こくれい)」と呼ばれる霊・力が宿ると信じる「穀霊信仰」がありました。
その中でも、中でも豆と米は神聖な存在として、鬼を払う力を持っていると信じられていたのです。
豆には、「魔目(豆・まめ)」を鬼の目に投げつけて鬼を滅する「魔滅」に通じ、鬼に豆をぶつけることにより、邪気を追い払い、一年の無病息災を願うという意味合いも加えられました。
豆まきの豆が「炒り豆」の理由
病気や災害を引き起こす鬼を退治するために、豆を煎る(炒る)ことで「魔の目を射る」とし、煎った豆である炒り豆を使います。
一方、生の豆は、芽が出ることから「魔の芽が出る」といわれ、縁起が良くないとされています。
実は、語呂合わせのてんこ盛りです。
落花生をまく地域も
地域や風習によっては、大豆ではなく「落花生」を撒きます。
北海道や東北地方、信越地方で落花生が多いのは、「雪深い地域では、大豆よりも大きい落花生の方が、雪の上にまいても拾いやすい」から、という説もあります。
他にも、落花生の産地である宮崎県や鹿児島県でも、落花生派。
しかし、落花生の国内生産量の90%以上を占める千葉県は、大豆派。
大豆派と落花生派の違いは、結局よくわかりません。
私の実家は、元は「大豆派」。しかし、いつからか「落花生派」になっていました。
節分と年男・年女・厄年の関係
節分豆まきの行事では、年男・年女・厄年の人が豆を撒いたりしますが、意味合いが異なります。
年男・年女と豆まき
年男・年女とは、その年の干支(えと)に当たる男女のことです。
干支は12年周期で回ってくるため、満年齢12歳、24歳、36歳…と、12の倍数の年齢の人のことです。
年男・年女は、歳徳神(歳神様、福の神)のご加護を多く受けると考えられており、縁起が良いといわれています。
また「年男」には、一家を代表して、大掃除や元日の飾り付け、歳徳神へのお供え、若水取り(元日の朝に水を汲むこと)、雑煮の用意など、正月の行事を取り仕切る役目の男性、普通はその家の「主人」との意味もあります。
新しい年の福を呼び込む大切な行事ですから、その家や年の代表者として、繁栄や無病息災を願う役割を担ってきたのです。また、歳徳神のご加護を受け、より強力な邪気払いの効果をもたらすとも考えられてきました。
厄年と豆まき
厄年は、体力的にも精神的にも変化が起こりやすい時期にあり、厄災に見舞われやすいとされています。
そのため、厄年には、神社や寺院で厄祓い/厄払いや厄除け祈祷を受ける風習があります。
節分での豆まきもその1つ。厄年の人が豆をまくことで、自身の厄を払い、無病息災を願うという意味合いが強くなります。
節分豆まき〜時間帯・手順・まく場所・掛け声
豆まきの時間帯
鬼は、真夜中(丑寅の刻)に現れると考えられていました。
現代の、午前2時〜4時頃。
本来は、鬼が現れるとされる時間に行うのがいいのでしょうが、現実的ではありません。
家で行うなら夕方〜夜がいいのでしょうが、行事として行う場合には時間は気にする必要もなさそうです。
実際、神社やお寺の豆まきは、午前中・午後・夕方など、寺社それぞれの時間で行われています。
豆まきの鬼は誰
これが難しい問題ですね。
豆まきでは、「鬼」と「豆を撒く」の二役があります。
「豆を撒く」のに縁起がいいのは、家の主人(家長)・年男・年女・厄年の人。
しかし、現実として、家や行事として行う場合には、男性や体の大きな人が「鬼役」、撒くのは「子ども」というところでしょう。
それ以外のメンバーで行う場合は、喧嘩にならないよう話し合いやクジでもして決めるのが良さそうです。
豆まきの手順〜どこから始める・どこにまく・やり方
家での豆まきは、家の奥から順に玄関に向かって行います。福を招き入れるのは、鬼を出してから。
【豆まきの順番】
- 前日に煎り豆を用意し、器や桝(ます)に入れ、神棚にお供えしておく
- 窓、外口、玄関などを開ける
- 奥の部屋から、「鬼は外!」と言いながら、部屋の外や窓の外へ向かって豆をまく
- 鬼が戻らないように、撒いた部屋の戸や窓をすぐに閉める
- 「福は内!」と部屋の中に豆をまく
- 奥の部屋から、順に玄関に向かって各部屋で行う
- 最後に玄関 追い残した鬼がいなくなるよう外へ向かってまく
- 玄関を閉め、「福は内!」
- 豆を拾って、食べる
※ 防犯上や家の環境に合わせて、窓や玄関の開けましょう
家によっては、実際に窓の外には投げられませんので、常識の範囲内で臨機応変に、、です。
節分の豆まきで使う炒った大豆を神棚にお供えしたものを「福豆」と呼びます。
福豆は、前日から神棚にお供えしておきますが、神棚がない場合には、半紙や白のコピー用紙を敷き、その上に豆を乗せ、目線よりも高いところに置きます。
前日に豆のお供えをするのを忘れた場合には、気がついたときにお供えしましょう。
豆まきの掛け声
地域差や、神社、お寺、家などの考え方や慣習によって異なります。
【代表的な豆まきの掛け声】
- 鬼は外!福は内!
- 鬼は内!福は外!
- 福は内!鬼も内! など
決まりがあるわけではありませんし、他にもあります。一緒に豆まきをする人と事前に確認しておくといいですね。
渡辺さんも、坂田さんも、豆まきしてはいけないわけではないので、ご自由にお楽しみください。
豆まきでまいた豆のこと〜食べ方・数
節分では、豆をまいた後に食べる「年取り豆」という習わしがあります。
年取り豆〜豆の数は年の分
節分の夜、豆まきをした後に、年の分だけ福豆を食べ健康長寿を願う「年取り豆」という風習もあります。
【年取り豆はいくつ食べる?】
- 満年齢分食べる
- 満年齢+1粒食べる
- 満年齢+2粒食べる
満年齢より1〜2粒多く食べるのは、「数え年」の考え方に基づきます。
地域差もありますし、厳密なものではないので、参考までにどうぞ。
子どもならいいですが、さすがに「いい年のオトナ」になると、数える気もなくなりますし、現実的に難しいものがあります。
豆まきでまいた豆は捨てるのか問題
豆まきで撒いた福豆は、本来は捨てるものではありません。
神様の力をいただき、鬼を追い払ったあと、福を招き入れたわけですから、粗末に扱っていいものではないのです。
ただ、家の中の豆はできる限り拾いますが、外に撒いた豆は自宅の敷地内であればそのままでも構わないでしょう。
マンションなど集合住宅の通路などに転がりでたものは、豆まき後か翌朝には責任を持って片付けましょう。
食べられない福豆(豆まきの豆)の捨て方
豆まきで撒いた福豆で、外から回収した分などのように食べない/食べられない豆は、処分する時には、白い紙などに包み、塩や清酒で清めてから捨てます。
神様の力の宿る豆ですから、考え方はお守りなどと同じです。
豆まきでまいた豆の食べ方
【豆まきでまいた豆の食べ方例】
- そのまま食べる
- ご飯を炊くときにまぜて「炒り大豆ごはん」にする
- フードプロセッサーで「きな粉」にする
- 「福茶」にする
食べ方はいろいろあります。
そのまま食べることに抵抗があり、すすぎたい場合には、「炒り大豆ごはん」や「福茶」がおすすめ。水やお茶を加える前に、ササっと水をかけてすすぎましょう。
我が家は落花生派なので、食べるのに困るようなことはありません。
豆まきの豆の簡単きれいな片付け方
豆まきの豆の簡単きれいな片付け方。残念ですが、全部拾うしかありません。
自分たちで撒いたのですから、仕方がありませんね。
でも、豆まきで使うのは、生の豆ではなく、炒り豆や落花生が一般的ですから、拾い忘れがあっても気にしなくても大丈夫です。日常的な掃除でそのうち回収されるます。
落花生を使う
地域によっては、そもそも大豆を炒った豆ではなく、落花生を使います。
- 子どもの誤飲予防
- 大豆よりも目立つので回収しやすい
- 殻に包まれていて、衛生面で気にならない
- そのうち食べ切るので、食べ方に困らない
我が家はいつも落花生です。
すぐ見つかりますし、回収漏れがあっても、掃除の時に見つかります。
個装された豆を使う
小分けし、テトラパックなどに個装された豆も、市販されています。
個装されていれば、衛生面や誤飲なども心配も不要です。バラっと撒く感じはありませんが、拾いやすさから考えても、これが一番簡単でキレイです。
個装のお菓子を使う
もう豆まきではなくなっていますが、イベントとして子供達と楽しむような場合、アレルギーなどの問題がある場合には、個装のお菓子でもいいですね。
チョコレートの場合には、「包み紙」のものは避けることをオススメします。拾い忘れがあるとかなり厄介です。
「包み」ではなく「袋」の方がいいです。
【重要!】小さな子どもや犬・猫の注意点
家族や友人たちと豆まきをするのは楽しいイベントですが、小さな子どもやペットがいる時には、心配りが必要です。
小さなお子様への注意点
豆まき用の豆は、小さなお子様が誤飲したり、喉に詰まらせる可能性があります。消費者等や国民生活センターからも注意喚起がでています。
特に注意が必要なのは、乳幼児(特に5歳以下)。
- 奥歯が十分に生えておらず、噛む力や飲み込む力が未発達なため、豆をうまく噛み砕けずに飲み込んでしまうことがあります。
- 喉に詰まらせて、窒息することがあります。
- 気道(空気の通り道)が狭いため、豆が気管に入りやすく、窒息や肺炎を起こす危険性があります。
事故を防ぐためには:
- 5歳以下のお子様には、豆まき用の豆(特に硬い豆やナッツ類)を与えない
- 豆の代わりに、お菓子など、より安全なものを使用
- 豆を与える場合は、小さく砕いてから与え、目を離さない
- 豆を口に入れたまま走ったり、遊んだりしない
犬猫ペットへの注意点
犬や猫に、豆まき用の豆(炒り大豆)や落花生を与える自体は問題ありませんが、注意が必要です。
犬や猫は人間と消化器官が異なり、特に植物性タンパク質の消化が苦手です。炒り大豆は硬く、丸飲みしてしまうことが多いため、消化不良を起こしやすく、嘔吐や下痢の原因になることがあります。
小さな犬や猫は、豆を丸飲みして喉や食道、胃腸に詰まらせてしまう危険性があります。
大豆アレルギーを持っている犬や猫がいます。アレルギー症状が出ると、皮膚のかゆみ、下痢、嘔吐などの症状が現れます。
他にも、与えすぎると肥満や病気の原因となるため注意が必要です。
事故を防ぐためには:
- 犬や猫のいない部屋で豆まきをする
- 片付けるまでケージに入れるなどして隔離する
- 小分け/個包装の袋入りの豆などを使う
- 一緒に楽しむなら犬猫用に少量のフードを撒く
拾い忘れ予防のためにも、個包装のものがおすすめです。
撒いたものを見つけやすい、拾いやすい、汚れない、湿気らない、日持ちする…
個包装は、人間にとっても優しいような気がします。
あられ入りもあります。↓
せっかくの厄災を祓い福を呼ぶ行事です。
くれぐれも事故のないよう、ご注意ください。