おもたせ・手土産・おつかいもの〜意味の違い、誤用、「お持たせ出さないのは失礼」の現在地

「おもたせ」は、お客様から頂いた物を出す時に使う言葉だと思っていたのですが、「おもたせレシピ」や、こだわりのある手土産を「おもたせ」とする言い方が昨今主流のようです。

自分が思っていた意味と違うのかとも心配になりますし、現在の「おもたせ」事情を理解しない「ケチなおばさん」になるのも望むところではないので、「おもたせ」の現在地を確認してまとめておきます。

目次

「おもたせ」と「手土産」の違いは

「日本語」としての、言葉の意味から確認します。

おもたせとは?

おもたせ / 御持たせ

《「御持たせ物」の略》来客を敬って、持ってきた土産物をいう語。多く、その客へのもてなしにその品をすすめるときに使う。「—で失礼ですが」

[補説] 近ごろでは、客が持ってきた土産物を受けた側からいうのではなく、「このお菓子がお持たせに最適です」のように、客が持って行く手土産の意で使うことが増えている

デジタル大辞泉

「おもたせ」は、相手に「持たせたもの」、つまりお客様が持参したお土産(手土産)を指す言葉です。

「手土産」とは?

訪問するする際に持っていくお土産のことです。

「おもたせ」と「手土産」の違いは?

「おもたせ」も「手土産」も、いずれもお客様側が持参する物のことですが、どちら側が使う言葉かによって異なります。

おもたせ:受け取る側が使う言葉
手土産:持参した側が使う言葉

ただ、上述の辞書にもありましたが、近年は持参する手土産の意味として使うことも増えています。

「おもたせに人気のお菓子」など、よく見かける表現ですね。

本来の意味であれば、誤用なのでしょうが、誤用も広まればそれが普通になるのは、よくあること。時代の流れです。

とはいえ、今の時点ではまだ正しい使い方とされてはいないので、「おもたせ」は受け取る側の言葉だと理解しておくのが無難です。

「おもたせ」の使い方

「おもたせ」は、来客をもてなす際に、相手に「持たせたもの」、つまりその方からいただいたお土産をだす際に、「お持たせで失礼ですが、、」など言うのが、一般的な使い方です。

「おもたせ」の誤用

  • 誤)おもたせを用意する → 正)お土産(手土産)を用意する
  • 誤)おもたせにオススメ → 正)お土産(手土産)にオススメ

「おつかいもの」「お土産」「おもたせ」の違いは?

「お遣い物(おつかいもの)」とは

他にも、紛らわしい表現に「お使い物 / お遣い物 / おつかいもの」があります。

「使い物(遣い物)」は「使って役に立つ物」という意味もありますが、贈り物、ご進物という意味でも使われます。

「おつかいもの」の使い方

「おつかいもの」は、デパートのお菓子売り場などでお土産を選ぶ際に「おつかいものですが・・・」と言ったり、逆にデパートの店員さんに「お遣い物ですか?」と訊かれたりと、品物を選ぶ際によく使われます。

「お遣い物」と言えば、相手への贈り物であることを意味しますので、包装してもらえます。その際に、包装紙の種類、のし紙(掛け紙)の種類や表書きなども確認されるのが、一般的です。

地域差やある言葉のようで、「おつかいもの」という言葉を使わない地域もあります。
その場合、手土産、お土産、みやげ物、贈り物などの表現をします。

ざっくりこんな感じ↓

おもたせ、手土産、おつかいもの の違い

同じ物のことですが、タイミングや、渡す側、もらう側によって、言い方が変わるのです。

おもたせを出さないのは失礼なのか

そして、もう1つの難題。「おもたせを出さないのは失礼なのか」問題。

そもそも論になりますが、いただいた手土産をその場でお客様に出さなくても、失礼にはあたりません

もてなす側が茶菓子を用意して、おもてなしをしたのであれば、なんの問題にもならないはずです。

過去には、頂き物は仏壇にお供えしてからいただくものであり、お客様にすぐに出すのは失礼との考え方もありました。(地域差や家の考え方の違いはあります)

お客様からのいただきものを出すことは、「お客様をお迎えする準備ができていなかった」という意味であり、「早く帰ってください」という解釈にもつながるとも、考えられていました。

いただいた手土産をその場でお客様に出し、もてなさないとしても、失礼にはあたらないのです。だから、頂き物をその場で出す際には、「おもたせで失礼ですが」と一言添える使い方をするのです。

近年は、どこかでこじれたのか、いただいた手土産は出す物、「お持たせは出して当然、ださないなんてケチ、失礼」といった考え方もあるようなので、もてなす側もそれを知っていた方が良さそうです。

いただく相手との関係性によっても変わりますよね。。
「一緒に食べようと思って、、」など言ってもらうと、出しやすいのですが、これもジェネレーションギャップなのでしょうか。

お茶菓子とおもたせ(手土産)の優先順位は?

いただく相手のとの関係性にもよりますが、近年は「おもたせ出して当然」派が一定数いることは確かです。

「自分の手土産だからその場で出してもらって、自分も食べて当然」という、若干乱暴感はありますが、面倒や後悔を避けるためにも、お茶菓子の出し方を整理しておきましょう。

  • 自分が用意した茶菓子を出す
  • お持たせ(いただきもの)を出す
  • 両方出す

考えられるのは3パターンですが、正解はありませんので、相手によって臨機応変に使い分けましょう。

相手が年配者の場合には、頂き物のお菓子(おもたせ)を出すことは失礼になることもあります。

ママ友や友人などであれば、一緒に食べるつもりで持ってきている可能性がありますので、頂き物のお菓子(おもたせ)を出し、一緒に楽しむ方が良さそうですね。

自分が用意したものと、頂き物が被った場合には、「おもたせで失礼ですが、美味しそうなので」と、一緒にいただく方がスマートです。

頂き物のお菓子(おもたせ)を出すか出さないかの判断は、もてなす側にあります。自分で用意した茶菓子を出したところで、なんの失礼にもなりません。

頂いたものは、キッチンなどに下げ一度開封してみる、包装紙に「冷蔵」「冷凍」などの表示がないか確認するなどして、判断するといいでしょう。用意していた茶菓子よりも、立派なお菓子を頂いたり、ケーキなどの生菓子であれば、一緒に食べるのもおすすめです。

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なんでも簡単に調べられる時代だからなのか、「マナー講師」やその受け売りコピペ族が多いからなのかわかりませんが、思わぬところで自分の無知さや時代の変化に気付かされます。

とんでもない、ありえないような作法でなければ、「そういうものか」と変化を受け入れていく方が、生きやすさに繋がりそうです。

実際、私自身が、「そういうもの」と教えられたきたことさえ、どれほどのものなのかさえわかりません。「地域差がある」というのも、よくある話です。

これが正解、これが正義と思っているものが、正解とも正義とも限らないわけですから、頭カチカチ・思考停止にだけはならないよう気をつけたいところです。

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