田舎暮らしを始めて最初の悲しい出来事は「イノシシ」でした。
長い間、耕作放棄地だった土地を開梱し、頑張って耕し、頑張って土作りをし、頑張って植えた果樹の苗木を、根こそぎ掘り起こされてしまったのです。
あまりに見事な掘り起こしっぷりに、最初は人間の仕業だと思いこみ、「田舎の人はなんて陰湿な嫌がらせをするんだ!」と思っていました。
掘り起こされた苗木の殆どは、掘り起こされた勢いで幹が折れてしまい再起不能。私の心も折れまくりで、あの頃の心の衝動は今だに忘れられません。
それで諦めるわけにはいかないので、もう一度心を強くして、また畑を整え、また苗を買い、再度植えたら、またやられました。
その時です。それが「イノシシ」の仕業だと確信したのは。
「イノシシの掘り起こし」とは
調べてみると、イノシシには、田畑などを自由気ままに”掘り起こす“習性があることがわかりました。
ミミズなどの餌を探している、という説もありますが、本当の理由は解明されていないようです。
私の観察(被害)状況からの見解としては、遊びです。あの行為は何かを楽しんでいるとしか思えません。
田んぼのように、水気を多く含んだ土地が好みのようですが、それだけではありません。野菜や果樹の畑、畑周りのただの通路のようなところまで、グチャグチャめちゃめちゃにしていきます。
苗木は格好の遊び道具なのででしょうか。驚くべき場所まで吹っ飛ばされているものもありました。
いずれにせよ、せっかく耕した畑を、せっかく整地した土地を、グチャグチャメチャメチャに荒らすので何とか撃退できないものかと考えました。
「イノシシ」撃退法 〜 狩猟で仕留める
イノシシは、うまく捌けば肉に臭みはなく、かなりの美味です。
知人の狩猟チームから時々いただいていたこともあり、自分たちでもやってみたいとも思っていました。
ですから、狩猟免許を取ることにしました。
罠と銃、両方取得。正確に言えば以下の2種です。
- 第一種銃猟免許(散弾銃、ライフル銃)
- わな猟免許
イノシシを仕留めるために必要十分な資格です。
免許取得用に試験勉強をしていると、現実が見えてきます。
狩猟免許を取得すること自体は簡単ですが、実際に銃を所有するには、別途講習を受ける必要があります。色んな手続きなども必要で、それが中々面倒です。かなり面倒です。まぁ、銃刀法がありますし、危険ですのでわからなくもありません。
では、罠で、、となりますが、罠で捉えることはできても、仕留めるには銃が必要です。
でも現実的に家の敷地内で発砲することは原則NG。止むを得ず発砲し仕留めたとしても、捌ける設備もありません。捌けない場合には、放置するのではなく、指定の施設まで自ら持ち込む必要もあります。大変なのです。。
とりあえず講習も受け、試験も申し込み済みなので、受験し取得はしました。
目的を失った狩猟免許は、有効期間の3年を過ぎ更新しなかったので、現在は失効しています。結局、田舎暮らしの思い出のひとつにすぎません。
撃退は断念して防除する
イノシシ対策で最も一般的なのが防護柵です。撃退するわけではないので抜本的な解決にはなりませんが、被害を食い止めるための防衛策です。
電気柵
なかでも広く採用されているのが電気柵で、農業者には補助金を出す自治体も少なくありません。
イノシシ対策用の電気柵は、感電によるショックに驚き、電気柵に触れる恐怖を学習することによって、柵に近づかないようにすることを目的とします。
【イノシシ防護の電気柵・電線の設置位置例】
- 最下段の電線は地面から15~20cm
- その上に20~30cm間隔で1~2本電線
- 最上線を40~60cm程度
毛皮の外側から電気ショックを与えてもイノシシはショックを感じませんので、敏感な鼻に電線を接触させるようイメージしながら調整します。電線を2~3段張りにして、電線に鼻先が触れやすく工夫するのがポイントです。
電線の位置を的確に、隙間なく敷地を囲めれば、確実な効果を期待できます。
その他の防除法
囲いたい土地が広範囲なので、電気柵ではない方法を調べたら、「忌避剤」がいいと聞きました。
イノシシが嫌う臭いを配合した液体で、被害を受けたくない場所の外周部に散布することで、イノシシが近寄らないようにするのです。
忌避剤
- 木タール液・ニーム・ハバネロ・ニンニクなどの天然成分を使用
- 土壌に無害
- 地方増進法により土壌改良材として定められた天然鉱石に上記成分を浸み込ませており、粒剤なので手軽に撒くことができる
超音波
超音波で防除するという機器もあるようです。試していないので効き目はわかりません。
犬
犬を放し飼いするといい、と聞きます。放し飼いに若干抵抗ありますが、犬をしっかり仕込めば、もしかしたら一番良い方法かもしれません。
栗のイガ
自然農法を営んでいる知人は、畑の周りに毬栗(いがぐり)を撒いていました。鼻にあたったり、踏みつけると不快なので、大量にまくとそれなりに効果もあるような、ないような、、、とのこと。ただ、想像以上に大量のイガグリが必要です。
イノシシとは共存できない
イノシシが田舎暮らしの最大の敵である理由は「掘り起こし」だけではありません。
土地や畑を荒らすだけでも許しがたいのに、収穫間近の作物を食べられてしまっては、もう共存は不可能です。
決まってやられるのは収穫間近なのです。美味しくなる時期を見計らっているのです。
夕方、敷地内でイノシシを目撃することが何度もありました。最初は分からなかったのですが、近づいてくると獣臭があるので気づきます。
1匹の場合もあれば、ウリ坊つきの家族のこともありました。こちらも気づきますが、あちらも気づきます。まさに猪突猛進、一目散に逃げ出すので襲われることはありません。
去った後にも獣臭がしばらく残ります。外出から戻った時に、今日も来ていたのかと気づきます。翌朝家の周りを確認すると、随分と楽しんでいった形跡が残されています。
動物愛護の観点では共存ということになるのでしょうが、そもそも里山では獣の域と人の住む域は分かれていました。同じ土地で共存していたのではなく、それなりに棲み分けされていたのです。今も昔も、同じ土地での共存はできないのです。