仏壇には写真を飾らない? 写真の置き場所、仏壇に入れてはいけないもの、遺影や写真の処分方法
「仏壇には写真を飾らない」と聞きますが、写真なしの供養でもいいのか、どこに写真を置けばいいのか、他にも仏壇に入れてはいけないものがあるのか、遺影や写真の処分はどうするのかなど、仏壇の写真や遺影に関する基礎知識をまとめておきます。
仏壇に写真を飾らない理由は?
結論になりますが、仏壇には故人の遺影(お通夜や葬儀で使用した写真)や、スナップ写真、存命の身内との家族写真などは、一切飾らないのが基本です。
理由は簡単、仏壇はあくまでミニチュア菩提寺、寺院の小型模型のようなもの。故人やご先祖様のための部屋でも、写真置き場でもないからです。
仏教では、仏壇はお寺の本堂と同じものであり、極楽浄土を表すものとされています。毎日お寺に参拝する代わりに、家に置いてご本尊を安置しお参りするものとして仏壇が出来たのです。
一方、写真は故人の姿が写っているとはいえ、位牌とは異なり魂が入っているわけではありません。単なる現世の「モノ」に過ぎず、宗教的な意味を持ちません。つまり、ご本尊に並べて拝む対象ではないのです。
なお、仏壇と位牌はセットのように思いますが、仏壇とセットなのはご本尊。仏壇に位牌がなくても問題はありませんが、ご本尊がいない仏壇は仏壇ではなく、ただの箱です。
仏壇に写真なしでも供養になる?
上述の通り、遺影もスナップ写真も仏教的には、ただの「モノ」です。ご本尊でもありませんし、位牌のように開眼供養(魂入れ)で故人やご先祖様の霊魂が宿っているわけでもありません。
仏具ではないのですから、仏壇に写真はなくても供養とは一切関係ないのです。
遺影や写真の置き場は?
仏壇の中が、写真に適した場所ではないだけですから、好きなところに飾って構いません。リビングや自分の部屋など、日常生活の中で目に入りやすい場所に飾るといいでしょう。
【遺影や写真を飾るのに適さない場所】
- 仏壇の中
- 仏壇の正面:写真を見るときに仏様にお尻を向けることになります
- 仏壇の真上:写真が仏様を見下ろす位置になります
ただ、最近は宗教との関わり方も変わってきているためか、細かいことを言わないようです。寺院によっては、飾っても問題ないと言われるかもしれません。
どうしても、仏壇の中に飾りたい場合には、仏壇の下段の左右いずれかに寄せておくといいでしょう。
写真があると成仏できない説は本当?
「写真があると故人が成仏できない」という見解もあるようですが、俗説ですから気にしないに限ります。
【仏壇の写真に関する謎の主張アレコレ】
- 仏壇の位牌と写真の両方があると、その霊が迷う
→ 開眼供養(魂入れ)した位牌には、故人の霊魂が宿りますが、写真はただのモノであり魂は宿りませんので、霊が迷うことはありません - 仏壇には沢山の先祖の霊が入っているけど写真が1つだと(全員分がないため)不公平感がある
→ 無事に成仏されたご先祖様はそんな小さなことは言いません - 霊が生前の写真を見て、この世に未練が残って成仏出来ない
→ ご先祖様が成仏できるよう追善供養するのです。ただのモノである写真を見て、故人の未練が残るとしたら、供養のあり方や菩提寺との関係を見直したほうが良さそうです - 遺族が写真を見ることで悲しみを引き摺ってしまい、それを見た霊が成仏出来なくなる
→ 成仏していただくために、追善供養をするのです
仏壇にお供えするもの・ダメなものは?
仏壇にお供えするものは?
仏壇へのお供え物にふさわしいものとして、五供(ごくう/ごく)があります。
【五供とは?】
- 香〜お線香
仏様が香りを召し上がるとされる解釈や、線香の香りは身を清らかにするともいわれています。 - 花(供花 くげ)
故人の魂の依り代であり、花のように心清くいてほしいという仏様の教えも表しています。 - 灯明・灯燭(とうしょく)〜ろうそく
ロウソクなどで明かりを灯すことで、暗い闇を照らし、煩悩(心をかき乱す欲)を捨て去り、明るい悟りに至るいう意味があります。 - 浄水(じょうすい)〜水やお茶
穢れがないことを意味する水をお供えします。 - 飲食(おんじき)
普段食べている炊きたてのご飯や果物などをお供えすることで、「日々おいしいご飯をいただいて満足に暮らせています」という感謝を表します。仏様はお供えしたご飯の香り(湯気)を召し上がります。
仏壇のお供えで避けるものは?
仏教では、ニオイや辛みの強い食べ物は修行の妨げになりますので、避けます。また、無益な殺生が望ましくないとの考えから、肉魚もお供えには向きません。
他にも、匂いが強いもの、常温保存できないもの、トゲや毒のある植物などもあります。果物やお花でも気をつけましょう。
遺影は処分してもいいの?
結論になりますが、遺影は処分しても何の問題もありません。
物を大切にするよう教えられ、怒られる時には「ご先祖様が見ている」など言われ育つと、遺影の処分はなかなかできないものです。
家の歴史が古く、家自体も広く、今後も住み続けるのであればそのまま残しておいてもいいのでしょうが、社会生活も住宅環境も変化しています。飾り続けるのが難しい場合には、潔く処分してみるのもいいものです。年を重ねると、気力体力的にも処分が難しくなります。思いついた時が処分時なのかもしれませんね。
宗教的な意味合いはありませんので、あとは気持ちの問題です。
気持ちの問題と言われると弱いです。。
遺影の意味や役割は?
現在、お葬式(お通夜、葬儀、告別式)では、当然のように遺影が飾られます。そのため、遺影は必要なものと思いがちですが、宗教的な意味は何もありません。
あくまで、最後のお別れの場で参列者(列席者)が故人の生前の姿や人柄を思い浮かべ、偲んだりできるように飾られるものなのです。
【遺影によくある勘違い】
故人の写真ですから、「位牌と同じように扱うべきではないか」と勘違いをしがちです。
位牌は開眼供養によって魂入れをしますが、遺影は開眼供養をしないため、宗教的意味がなく、ただの写真にすぎないのです。
遺影の起源は死絵(しにえ)と考えされています。
死絵とは、幕末を中心に江戸時代後期から近代にかけ、主に歌舞伎役者が死去した際、その訃報と追善を兼ねて版行された浮世絵のことです。 役者の似顔絵に、命日、戒名、墓所、生前の業績、辞世、追善の歌句などが記されたようです。(参考:wikipedia)
現代の遺影写真が一般化したのは、写真の普及にあわせ葬儀社が演出の一環として取り入れたことが始まりとの説もあります。
遺影を飾るのはいつまで?
宗教的意味合いがないのですから、遺影を飾る期間に決まり事はありません。
仏式では、四十九日まで後飾り祭壇を設置することが多いため、その祭壇に飾り、その後は処分したり、仏壇に飾ったり、壁にかけたりと、各家庭によって対応が異なります。お盆やその後の法事法要で飾ることもあります。
遺影の処分方法は?
日本では、宗教的な意味合いの他にも、慣習(お盆など)として、故人の供養で寺院や神社との関わりが強いです。
そのため、お葬式で使用したものや、故人が生前愛用していたもの、写真などを、ゴミとして処分することに抵抗を感じる人も少なくありません。
残し続けられる環境であればいいでしょうが、何らかの理由で残せない、処分が必要な場合には、心苦しさを感じてしまったりします。遺影の処分方法はいくつかありますので、ご自身が納得する方法で処分されることをオススメします。
遺影は燃えるゴミに出す
上述の通り、遺影もただの写真。他の写真と同様に、普通ゴミ(家庭ゴミ、燃えるゴミ)として処分して構わないのです。額縁は、素材に合わせて地域のゴミ出し方に従いましょう。
そのまま捨てることに抵抗がある場合には、白い布や紙に遺影を包み、塩を振ってから処分するといいでしょう。
神社や寺院でお焚き上げしてもらう
自分で処分することに抵抗がある場合には、寺院や神社で「お焚き上げ供養」を行ってもらう方法がオススメです。
お焚き上げ供養は、故人に関する物を供養し焼却する宗教的な儀式ですから、ゴミの扱いとは異なります。
お焚き上げ供養は、依頼する寺院や神社、供養をお願いする量によってお布施や玉串料が変わります。写真や手紙程度であれば、3,000円程度と言われていますが、ダンボールサイズになると5,000〜10,000円程度かかります。
神社や寺院でこっそり焼却してもらうのはダメ
お布施や玉串料を包まなくていいようにと、どんと焼きなどに持ち込んでこっそり焼却してもらうのは、よろしくありません。。
神社や寺院で焼却しているので、本人にとっては荷が降りるかもしれませんが、故人の供養にはなりません。近年、お焚き上げに持ち込むものにも制限があります。間違いなく制限外であることも忘れずに。
葬儀社などの業者に依頼する
葬儀社や供養業者でも、受け付けてもらえます。
葬儀社によっては、遺影の処分が含まれていたり、小さくリサイズしたものを用意してもらえたりもします。
リサイズやデジタルデータにして保管する
手元に残したい場合には、リサイズしたり、デジタルデータにする方法もあります。
小さくリサイズし、写真立てなどに収めれば、部屋にも飾りやすくなります。デジタルデータがあれば、場所も取りませんし、いつでもすぐに見ることもできます。
他にも、複数のご先祖様の遺影を1枚にまとめてもらうなどの方法もあります。
スナップ写真を飾る
ご先祖様の場合難しくなりますが、家族であれば、遺影を処分しスナップ写真など、故人らしい表情のものや、思い出の写真に交換することもオススメです。
実家の片付けや、住み替えなどのきっかけがあると、一気にコトが進みます。
遺影についているリボンはどうする?
上述の通り、遺影自体がただの写真ですから、リボンもただの飾りです。いつ取り外して処分しても構いません。
遺影のリボンの由来にも諸説あるようですが、弔意を表す物に過ぎません。落ち着いた時に外し、家庭ゴミとして処分します。
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仏壇に写真は飾らないものですが、飾ったところでバチが当たるわけでも、故人が成仏しないわけでもありません。結局は、自分次第です。仏壇に遺影や写真を飾り、手を合わせることで、自分の心に平穏がもたらされるのではあれば、それはそれで構わないということなのでしょう。
他の方に「写真を飾ると成仏できない」など言われても、心を乱されることはありませんように。