今の時代、拒否権のないお墓の承継は暴力的すぎる、という話

このサイトでは、私たち夫婦が過去に他のブログなどで書き散らかしてきたものをリライトして、備忘録としてまとめ直しています。最近、葬儀やお墓などに関することに取り掛かっているのですが、しみじみ感じているのは供養は大変だ、、ということです。もちろん、ご先祖さまあっての私たちなのですから、当然と言えば当然ですが、とにかく金銭的な負担が大きい。

数万程度であればいいのですが、何かしようとすると数十万、百万単位になるのは、厳しいものがあります。

仏教には「喜捨」、つまり惜しむ心なく、喜んで財物を施捨する教えがあります。檀家であれば、お布施にあたります。

金品のように自分の執着の元となるものを手放すという具体的な行動を通して、いかに自分の執着が強いものであるのか、そういったものから解き放たれることがいかに難しものであるかを実践するのが「お布施」。

実際に、寺院はお布施で成り立っていることが多いわけですから、それはそれでわかるのですが、数十万、百万単位になると、考えたくもなります。

仏教的には、その数十万を喜捨することで生命に影響がないのであれば、そのお金に執着することを手放しなさい、、ということなのでしょうが、気分のいい話ではありません。せめて数万なら、気持ちよく手放しますが、、、それをいうと、それが執着だからお布施を、、という堂々巡りになります。

神仏には畏敬の念はありますが、僧侶の私生活などが垣間見えると、思うところもあるものです。。僧侶やその関係者には、あらゆる執着を手放すお手本を見せて欲しい。

そんな信仰心のない私ですが、私たち夫婦には幸いなことに承継するお墓がありません。

夫の実家のお墓は夫の兄弟が承継、私の実家のお墓は数年前に母が墓じまいしています。母が健康なうちに、自分の意思で行いましたので、なんの問題もありませんが、これをボコッと当然のように渡されたら、、と考えるとなんとも言えない気持ちになります。

お墓などの「祭祀財産」は、預貯金や不動産などの財産とは扱いが異なり、いわゆる「相続財産」には当たりません。遺産分割の対象ではなく、1人の祭祀承継者に引き継がれます。

祭祀承継者は、基本的には長男。だから、長男は家のお墓を守り、次男以降は自分の代で新たにお墓を作ってきたのです。

祭祀承継者の決め方は、民法897条に規定されています。

  • 被相続人が指定した者が祭祀承継者になる
  • 被相続人の指定がない場合は、慣習にしたがって祖先の祭祀を主宰すべき者が祭祀承継者になる
  • 被相続人の指定がなく、慣習も明らかでない場合は、家庭裁判所が祭祀承継者を選ぶ

ここに、自分の意思はありません。祭祀承継する人が自分しかいない場合には、自分の意思とは関係なく自動的に祭祀承継者。財産のように放棄することも、拒否することも許されないのです。

ちなみに、祭祀承継を拒否するには、家庭裁判所に認めてもらう必要があります。結局、ほぼ無理、逃げ道なしです。

そして、祭祀承継者になると、墓地などの祭祀財産を受け継ぐだけでなく、墓地の管理料や檀家としての費用、必要に応じて法要を営みお布施を包みます。その費用は、経済的な負担を理由に、兄弟などの他の相続人や親族に対して当然に費用を請求できるわけではないのです。

いくらご先祖様あっての自分とは言え、暴力的です。

お墓はもう管理できないし、、となった場合には、墓じまいの費用も負担します。

では、墓じまいする費用がない、費用をだす気がないなら、どうするか。。。

放置することになります。

そんなわけで、放置されたお墓の行末ですが、、、

  1. 管理料の支払いに関する督促を電話や手紙で受ける
  2. 期限後に該当区画での立て札や官報掲載により使用者確認の告知を受ける
  3. 告知後一定期間が過ぎても使用者が管理者へ連絡しない場合、墓地使用者が、死亡または居所不明であるとされる
  4. 墓地管理者が縁故者調査を行い、祭祀承継者を探す
  5. 祭祀承継者がいない場合、遺骨は取り出され、墓石は撤去されて更地となる
  6. 墓地管理者が、次の使用者の募集を始める

まとめると、管理料を催促され、支払わないと探されます。。。

自分の意思とは関係なく、祭祀承継者とされ、逃げ道もなし。逃げれば探される。自分が作った借金でもないのに、借金取りに追われているかのようです。しかも、そこには「先祖供養」という良心も上乗せして攻めてきます。

信仰が深い、家族や親族と仲が良い、経済的にその程度の費用は問題ない、先祖供養を当然と思う方には不謹慎な話でしょうが、時代の変化と共に大きな問題になっていくことは間違いありません。

地方の寺院などでは、祭祀承継者を探し出す、あるいは自腹で更地にして次の使用者を募集するという余力もないことも多く、実際には放置されたままです。公営の墓地でも、同様。現状では管理料を滞納し放置したとしても、すぐに遺骨を撤去されるわけでもないようです。

なお、墓地から撤去された遺骨は、基本的に墓地内の供養塔などに合祀埋葬されます。ゴミとして捨てられるわけではありません。それ、違法ですから、、

で、あれば、もしかして、放置して合祀埋葬してもらったほうが良くない???なんてことになりかねないですね。

いずれにしても、拒否権のないお墓の承継は暴力的すぎますし、社会生活が変化した今の時代にはフィットしない気がします。世襲の多い政治家殿にとっては、「家」は庶民が思う以上に大切なものですから、このシステムが変更になるのは、よほど大きな社会問題となり、暴力度が増してから、、というところでしょう。

そんなことをツラツラ考えながら、今日も明日も煩悩まみれになりながら、楽しく生き抜く術を探し続けていきたいと思っています。

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この記事を書いた人

アラカン夫婦の備忘録

これからの人生をより心豊かに、より穏やかに生き抜くため知恵や情報をツラツラ綴っています

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