田舎暮らしの最もクールなビジネス〜クラフトビール/マイクロブルワリー起業の最後のチャンス? 全国のクラフトビール醸造所リスト

欧米を中心に世界各都市には、その土地ならではの地ビール=クラフトビールがあります。

数年前に、アメリカ オレゴン州のポートランドに1ヶ月程滞在したことがあります。

ポートランドも、クラフトビールが盛んです。1つのマイクロブリュワリーでも、数種類〜20種類以上のクラフトビールを扱っているところもあります。お店ごとに特徴ある美味しさには、毎度毎度驚かされていました。

何を飲むか選ぶだけでも楽しいのですが、早々に疲れしまったほどです。結局、IPAなどエール系を各店で頼むことにし、飲み比べを楽しみました。

近年、日本でも各地にマイクロブリュワリー(クラフトビールを製造する小さなビール工場)が増えてきています。世界でも認められるクラフトビールも登場し、クラフトビール好きにとっては、嬉しい楽しい限りです。

とても魅力的な仕事であり、可能性も無限大の成長ビジネスです。我こそはと思う方、是非挑戦してください。できた際にはお声がけ頂ければ幸いです。

2026年には酒税法改正があります。今後、マイクロブルワリー起業が難しくなる可能性もゼロではありません。計画はお早めに。

目次

最高にクールなビジネス クラフトビールで起業する方法

先ずは、クラフトビールに関する基礎的なことを整理します。

地ビールとクラフトビールの違いは?

日本では1994年の酒税法改正後、全国各地で地ビールブームが起こりました。

行政主導で一時的なブームで終息したそのイメージがあまり良くないこともあり、その後に新しく立ち上げた醸造所の地ビールは「地ビール」と言わずに「クラフトビール」と呼ぶことが多く、意味的には同じです。

地ビール」は、地域に根ざした感がありますので、お土産などではあえて「地ビール」と打ち出していることもあります。

自家用でも家庭でビールを造るのは違法

日本では、アルコール度数1%を超える酒類を無免許で作ることは酒税法違法です。

ですから、家でビールを作るホームブルワリーは認められていません。

酒税法に違反すると、10年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられる可能性があります。

ビール醸造は、たとえ自家用の一杯でも、税務署からビール/発泡酒製造免許がおりている工場でしか造ることができないないのです。

そのため、ビール造りの技術は、大学の醸造科で学ぶか、国内外の醸造所に勤務、研修しなければ体得することはできません

自家製ビールキットでは、アルコール度数1%以上にならないよう製造方法が取扱説明書に具体的に記載されているはずです。

日本での酒造りには制限が多い

外国と比較すると日本の酒税は極めて高く、ビジネスとして成立させるには大量生産大量販売ができる大手資本が必要でした。

1994年の酒税法改正で、ビールの最低製造基準は2000キロリットルから60キロリットルにまで緩和されました。

2018年の酒税法改正では、ビールの定義も広くなりました。

  • ビールの麦芽比率:67%以上 → 50%以上へ引き下げ
  • 副原料の拡大:米、麦、トウモロコシ → 果実や香辛料の使用も解禁、ただし使用麦芽の重量の5%以内

制限は緩和されてきましたが、免許登録のハードルは今でも高いままです。

マリクロブルワリー開業の最後のチャンス?

「クラフトビール」「地ビール」といっても、ビールの製造免許には、「ビール製造免許」と「発泡酒製造免許」の2種類があります。

現在、マイクロブルワリーの多くは「発泡酒製造免許」を取得し、製造しています。

年間製造量麦芽使用率副原料使用率
ビール製造免許60㎘以上原料の50%以上5%以内
認められた副原料のみ
発泡酒製造免許6㎘以上原料の50%未満5%以上
法定外の副原料も使用可能

発泡酒というと、安いビール系アルコール飲料のイメージがある方も少なくありませんが、麦芽比率が50%未満で果実・果汁・香辛料などの副原料を5%以上使用すれば、日本では「発泡酒」扱いです。

製造免許も取得しやすく、麦芽使用率によっては酒税もビールより安く、オリジナリティも出しやすい、といたれり尽せりなのです。

ただし、酒税法改定によりビール系飲料の酒税が統一されます。

伴い、登録免許の要件も変わるのではないかと懸念されましたが、今回の法改正では一応見送りです。

発泡酒免許で製造しているマイクロブルワリーが多いことに配慮し、「新酒税法ではビールと定義されるものでも、免許を取得した時点で発泡酒とされていた場合は引き続き発泡酒免許で製造・販売が可能」とされています。

今後、免許の取得条件が厳しくなる可能性はあります。

「免許を取得した時点で」と限定されています。免許の取得条件が今後変更になれば、マイクロブルワリーの開業は難しくなるものと考えられます。

クラフトビール醸造の工程

STEP
コンセプト設計

どんなビールを造るか、コンセプト設計は超重要です。

大手ビールメーカーもクラフトビールに参入しています。2024年現在、全国各地にクラフトビール醸造所が800箇所以上あります。

クラフトビール市場は成長株ですが、その分競争も激しいので独自のコンセプトによる差別性を有する製品開発が必要です。

STEP
原材料の選定

コンセプトに基づき、その製造に必要な原材料を調達して選別します。

ビールの原料や副原料の質や配合/レシピでビールの味に個性を出します。

地方においては、原料/副原料を地場で調達や自社生産することも可能なので、よりオリジナリティのあるビールに仕立て上げることが出来ます。

STEP
麦芽粉砕・仕込み

麦芽粉砕機を使って、ビールの主原料である麦芽(モルト)を粉砕し、細かく砕いた麦芽と副原料を温水と混ぜ合わせます。

麦芽の酵素の働きででんぷん質は糖質に変わり、糖化液の状態になります。これをろ過することで「麦汁」となります。

この麦汁にホップを入れて煮ていくことで、香りや苦みが加わります。

この工程では、副原料やホップにこだわることでビールに個性を出します。

STEP
発酵

煮沸された麦汁を10〜25℃(種類により異なる)に冷却し、発酵タンクへ移し酵母を加えます。

7〜20日間で酵母の働きにより麦汁中の糖分がアルコールと炭酸ガスに分解されビールになります。

ちなみに、「エール酵母」を使用したものがエールビール、「ラガー酵母」を使用したものがラガービールと呼ばれます。

発酵が終わったビールは貯酒タンクへ移され、0℃くらいの低温で数十日間貯蔵されます。

この間にビールはゆっくりと熟成し、調和のとれたビールの味と香りが生まれてきます。

STEP
充填(瓶・樽詰め)

発酵が完了したビールは、しばらくの期間熟成せたのちに缶や瓶、樽に充填します。

充填前に濾過、充填後に火入れするビールもあります。そのほうが賞味期限が伸び、流通や管理が容易になりますが、クラフトビールならではの個性は無くなります。

瓶の形状やラベル、ネーミングデザインで、アイデンティティを表すことも重要な工程です。

ビールは工業製品ですが、クラフトビールはその名の通り「手作り」で表現するから面白く、消費者にはそこが魅力のビールです。

作り手の思いや技術こそが成功のポイントに他なりません

基礎的知識や技術の習得は勿論、マニュアルや既成概念に捉われない、「新しい」を追及した研究と実践の繰り返しこそが重要な工程であり、クラフトビール醸造所・マイクロブルワリー開業成功のポイントです。

クラフトビール醸造所の開業手順~手続き・資金・免許について

クラフトビール起業に容易な環境とはいえない日本では、最低限以下の項目をクリアしなければなりません。

製造免許に関して

醸造免許をとるには、経営基盤や製造技術、製造設備の有無などの要件を満たす必要があります。

「税務署では、提出された申請書に基づき申請者の法律の遵守状況や経営の基礎の状況、製造技術能力、製造設備の状況などのほか、製造免許を受けた後1年間の製造見込数量が一定の数量に達しているかどうか(最低製造数量基準、ビールについては60キロリットル)を審査し、これらの要件を満たしていれば製造免許が付与されることになります。

出典:国税庁 【酒類製造免許関係】

要するに、ビール製造免許を取得したい場合、「製造見込量年間60キロリットル(発泡酒は6キロリットル)」に達していなければなりません。

60キロリットルは結構な量です。小瓶334mlの瓶で換算すると約18万本です。

この量をどのように販売するのかを、明解に提示する必要があるのです。

飲食店併設で販売するのであれば、1人1L飲んでもらえた場合でも、年間で60,000人の来店、休みなしで営業して1日平均およそ165人のお客様に来店してもらわなければなりません。複数店舗でのシェアするなどの計画が必要です。

発泡酒であれば、6キロリットル。小瓶換算で1.8万本程度ですから、ハードルはかなり下がります。

卸しや直販する場合には、酒類販売業免許が必要になります。

催事開催期間中の臨時販売であれば、条件を満たせば届出による期限付酒類小売業免許の取扱いを受けることもできます。
参考:国税庁 【販売業免許関係】

事前に販路やターゲットを調査し、それを根拠に販売が見込める量を試算する、他社のクラフトビールやOEM製造したビールを売ってみて、それを根拠に算段するなどの必要があります。

製造工場や免許に関わる費用について

クラフトビールを製造するための工場は、数年前でも最小規模でも設備一式にはおよそ1千万必要、よりこだわった製品を造るには2千万とも言われていました。

昨今の物価高や人件費の高騰、円安などの事情を考えると、もう少し上乗せが必要でしょう。

無論、土地・物件は別途必要です。

工場は、田舎の空き家や工場、廃校などをリノベーションし、原料も地場で調達するのが理想モデルです。

そこで造られたビールは、新たな地域ブランドにもなります。地域に資するビジネスとして、支援を受けることも可能になるでしょう。

許可がおりてからの仕込みですから、実際に販売し収益がでるまでの人件費などの運転資金もかかります。

他にも、免許取得に際し、酒類製造免許の登録免許税が15万円、食品衛生法に基づく「酒類製造業の営業許可」の新規申請手数料18,000円、卸売や小売をする場合には登録免許税が3〜6万円、これからの申請手続きを行政書士に委託する場合には、代行手数料が10〜20万円程度かかります。

技術の習得に関して

工場確保もマストですが、それ以前に確保しておきたいのが技術です。

研修を受け入れているブリュワリーもありますが、素人が数か月の研修後に開業するには不安が残ります。自分が目指すべきクラフトビールを造っているブリュワリーで、実際に働いてみることをおすすめします。

勿論、大手よりも小規模ブリュワリーで、出来ればクラフトビールの本場、海外のマイクロブリュワリーが理想です。

その修行の過程をSNS等で公開することもビジネスの一環ですので、修行先選びも大事な成功要素になるのでしょう。

免許申請に関して

最後に免許申請についてです。

工場予定地の税務署に相談するのがスタートです。

必要な書類は、税務署員と面談しながら作成していくことになります。

経営基盤にかかわる書類はもちろん、醸造設備の見積もりや製造技術の有無(製造研修済みかどうか)、どんなビールをどのようなレシピで造るのか、等々、事細かなことを記すことを要求され、何度もやり直しさせられます。

ちなみに、国税庁まで申請を通すまでに約6~12ヶ月必要です。根気がいる工程ですが、ここをクリアしなければ何も出来ません。

国内クラフトビールブルワリーリスト【2024年5月更新】

  • 大手メーカーおよび大手傘下のメーカーも含みます
  • 国税庁が「地ビール製造免許場」(年間最低醸造量60KL以上)または「発泡酒製造免許場」(同6KL)としている施設
  • 同事業者が同一県内に複数の醸造所を稼働している場合でも、1つの掲載です
  • 新規稼働や休業などによる追加・修正を定期的に行います
  • ★印が個人的に注目しているマイクブリュワリーです

北海道

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クラフトビールビジネス参考サイト(酒販店・インポーター・その他)

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この記事を書いた人

アラカン夫婦の備忘録

早期リタイヤして地方移住〜田舎暮らしをした経験と、その後の暮らしで学んだことや役立つことを、これからシニアになる全ての人たちに向けて発信しています。
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