なぜ騙されるのか〜化学物質DHMOの危険性から見える本当の危険性

人はなぜ、ネガティブな情報に振り回されるのか、過剰反応をするのか、深く考えずに騙されるのか、、、

ネガティブで不安を煽り、怒涛のように押し寄せる玉石混交の情報に埋もれながら、加齢と共により騙されやすくなるであろう自分のために、恐るべき化学物質DHMOを例に、本当の危険性について記しておきます。

目次

DHMO(ディー・エイチ・エム・オー)とは?

DHMO( Dihydrogen Monoxide ジハイドロジェン・モノオキサイド)

和訳は、一酸化二水素、水素と酸素の化合物です。

化学式 は、H2O、要は、「」のこと。

単なる「水」をあたかも危険な化学物質であるかのよう錯覚させるため、作為的に元素の構成に基づく化合物名DHMOとして表現したものです。

DHMOの危険性

DHMOとは

・水酸と呼ばれ、酸性雨の主成分である。
・温室効果を引き起こす。
・重篤なやけどの原因となり得る。
・地形の侵食を引き起こす。
・多くの材料の腐食を進行させ、さび付かせる。
・電気事故の原因となり、自動車のブレーキの効果を低下させる。
・末期がん患者の悪性腫瘍から検出される。

その危険性に反して、DHMOは頻繁に用いられている

・工業用の溶媒、冷媒として用いられる。
・原子力発電所で用いられる。
・発泡スチロールの製造に用いられる。
・防火剤として用いられる。
・各種の残酷な動物実験に用いられる。
・防虫剤の散布に用いられる。洗浄した後も産物はDHMOによる汚染状態のままである。
・各種のジャンクフードや、その他の食品に添加されている。

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

DHMO=「水」。上記は水の性質そのものであり、嘘ではありません

この話はジョークの一種なのです。

1997年にネイサン・ゾナーという14歳の少年が「人間はいかにだまされやすいか?」の調査のため、単なる水をDHMOと表現しその危険な性質(上記)だけを強調し使用禁止を訴えました

その結果、多くの大人たちがDHMOは危険な物質と騙され使用禁止に賛同した、というレポートが科学フェアで入賞。マスコミにも取り上げられて話題となりました。

そして、いまだにDHMOは危険物質と信じている人も少なくないのです。

DHMOからわかる本当の危険性とは?

「水」ですら、恣意的に危なそうな事柄だけを取り出せば、いかにも危険な化学物質のように見え、規制の対象とさえなりかねないことが、証明されました。

「危険」「体に悪い」のイメージを作り出すのは簡単

特徴の切り取り方、見せ方次第では、どんなものでも「危険なもの」というイメージをつくり出すことができます。

不明瞭、わかりにくい名前で、ネガティブな情報に過剰に晒されると、正しく理解しないまま、印象で「危険」と判断してしまうのが人間なのです。

  • DHMO (=水)も過剰摂取すると中毒死するのは事実
  • 塩化ナトリウム(=塩)や酒に含まれるエタノールも同様
  • その他生命活動に必要な栄養でも過剰摂取すれば害

ちなみに、「アルコール」というと最近は「体に悪い」といったイメージが強くなりましたが、このアルコールにもいくつかの呼び名があります。

  • エチルアルコール:国際化学命名法の呼び名
  • エタノール:慣用名
  • 酒精:日本語名称

いずれも、お酒として飲むアルコールと成分的には同じものです。

酒精は食品表示のルール上、食品添加物扱いです。食品添加物の一切を否定される方も一定数いるわけですが、食品添加物の「酒精」は当然に食品用のアルコールですから、口にしたところで害があるものではありません

また、添加物欄に「酒精」とあれば抵抗感がなくても、「エタノール」であれば問い合わせ、「エチルアルコール」など表示されていたら苦情にもなりかねません。実際には「酒精(アルコール)」など表示されますので、そんなことはありませんが、、

「安全安心」「体にいい」のイメージを作り出すのも簡単

逆もまた然りです。

不都合なものを「危険」「体に悪い」ネガティブ情報に晒し続け、最後にポコっと反対の情報を与えればいいのですから。

  • 添加物は毒、天然由来/自然由来なら安心
  • 薬は毒、サプリ/健康食品なら安全、体にいい
  • 薬は怖い、機能性表示食品なら安全

こういったものも、イメージ戦略に踊らされています。

天然由来、自然由来といったものを否定するわけではありません。

ただ、天然由来、自然由来でも、体に悪いもの、毒性があるもの、毒性の強いものがあるのも事実であり、言うほど安全でも安心でも、効果的でもないものも多数あるのです。

機能性表示食品制度とは?
国の定めるルールに基づき、事業者が食品の安全性と機能性に関する科学的根拠などの必要な事項を、販売前に消費者庁長官に届け出れば、機能性を表示することができる制度

特定保健用食品(トクホ)と異なり、機能性表示食品には国の審査はありません。

国の審査を通れば、安全安心効果的とも限りませんので、どちらが優れているか、自分の体に合うのかの判断基準にはなりません。

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世の中にあるものを、ネガティブに捉えよう、危険なものと錯覚させようと思えば、いくらでもできてしまいます。そして、ネガティブスパイラルにハマってしまうと、抜けられないほどにネガティブ意識に飲み込まれます。まさに沼。

DHMOが示唆するのは、人間は切り取られ、煽られた情報にかくも簡単に騙され、踊らされるという、より厄介でより根深い危険性です。

全ての情報を、「これは正しいのか」とファクトチェックすることは現実的ではありませんが、せめて「これで一番得するのは誰だろう?」と考えることを忘れないようにしたいものです。

正しい答えには辿り着けなくても、安易に騙されたり、振り回されることが減るように思っています。

著:スティーブン スローマン, 著:フィリップ ファーンバック, 翻訳:土方 奈美
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